北陸大学同窓会 ロングインタビュー

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6年の学びを通じて養われた
医療人としての自信と自覚
海上自衛隊 薬剤官
小原 朝華
陸上自衛隊 薬剤官
伊藤 頼親
6年の学びを通じて養われた
医療人としての自信と自覚
海上自衛隊 薬剤官
小原 朝華
陸上自衛隊 薬剤官
伊藤 頼親
海上自衛隊 薬剤官
小原 朝華
2012年 北陸大学薬学部 卒業
海上自衛隊 補給本部 需品部 需品補給課 衛生資材係長
陸上自衛隊 薬剤官
伊藤 頼親
2013年 北陸大学薬学部 卒業
陸上自衛隊 補給統制本部 衛生部 補給計画課 計画管理班 補給計画幹部
小原さん、伊藤さんは薬剤師の国家資格を持ち、それぞれ海上自衛隊、陸上自衛隊で薬剤官として活動されています。薬学を学ぼうと思った経緯から教えてください。
小原さん : 実はそれほど高尚な動機はないんです。中学生の頃、錬金術師が街の人の依頼を聞きながら薬草を採取し、薬を調合して任務をクリアしていく…というRPGにはまったのですが、「そういうゲームが好きなら、薬剤師に向いているんじゃない?」と母に言われたことで、薬剤師という職業に興味を持ちました。

伊藤さん : 私もきっかけは中学生時代です。野外学習で、植物の中には薬理作用の強いものがあったり、使い方によっては毒になるものがあるんだと知り、そうした薬草・毒草について学びたい、さらにはそれを職業としたいということで薬学の道を選びました。
北陸大学に決めたのは、大規模な薬用植物園があり、生薬に関する教育・研究に力を入れていると聞いたからです。
おふたりは学年がひとつ違う間柄ですが、在学中から交流があったのですか。
伊藤さん : いいえ、学生時代はお互いに存在も知りませんでした。私が自衛隊に入隊して2年目、三宿駐屯地内にある自衛隊中央病院で研修があったのですが、そこで初めて小原さんに会い、北陸大学の先輩なんだと分かりました。陸上自衛隊、海上自衛隊と配属は違いますが同じ薬剤官ですから、その後は業務についていろいろと相談するようになりました。
薬剤官の仕事について教えてください。
小原さん : 薬剤官は「薬剤師である自衛官」で、制服を着用します。たとえば海上自衛隊であれば4万2千人中、約50人が薬剤官として在職しています。 私たちの役割は自衛隊で働く方を体調面から支えることです。自衛隊病院に勤務して調剤や服薬指導などの薬剤師業務を行うこともありますし、派遣先で自衛隊の医薬品の管理、調達、補給などの任務に従事することもあります。
薬剤官になるには、自衛隊幹部候補生の試験と薬剤師の国家試験の2つに合格する必要があります。おふたりとも狭き門を突破されましたが、薬学部の学びで思い出に残っていることを教えてください。
小原さん : 暗記科目は苦手でしたが、薬学を学ぶこと自体はとても楽しかったですね。友人と一緒に勉強し、分からない部分を教え合うことで乗り切れたことも多かったです。
北陸大学は設備が整っていますし、何より教職員さんが親身になってくれます。大学という場では何をどう学ぶのかといった基本的なところから指導していただき、恵まれた環境で学べたと思っています。

伊藤さん : 「薬剤師は化学式を認識して仕事をする唯一の医療系職種だから、そこはきちんと身につけておきなさい」という先生の言葉が印象に残っています。もっとも当時の私は、小原さんとは違って追い込みで何とかしようというタイプでした(笑)。
薬学部の6年間は、1~2年次は基礎的なことを学び、3年次以降に応用的な内容になっていきます。基礎的な知識が最終的に何につながるのか、どのように活用されるのかが見えてくると、学ぶことが一気に面白くなりました。
薬剤官として働くという進路は、どのように決めたのでしょうか。
小原さん : 私はもともと「薬剤師になりたい」ではなく、「薬学を学びたい」と思って北陸大学に入学したので、就職についても一般の薬剤師に限定せず、広い視野で考えていました。加えて飽きっぽい性格でもあるので、いろんな場所でいろんな仕事ができた方が自分に合うんじゃないかとも思いました。

伊藤さん : 同感です。私は学内で開催された合同就職説明会に参加し、自衛隊で働くという選択肢があることを知ったのですが、薬剤師資格を活かしていろんな業務に携わることができるという点に魅力を感じました。

小原さん : 災害時、自衛隊は被災者の捜索・救助、医療、人員や物資の輸送などさまざまな活動を行います。東日本大震災が起きたとき私は大学5年生で、大変な状況を見ているだけで何もできないという非常に歯がゆい思いをしました。そうした体験もあって、災害時に実際に動ける自衛隊を選んだという面もあります。
大学の6年間でどんな成長がありましたか。
伊藤さん : 北陸大学の入学式でのことですが、自分ひとりで参加したところ、保護者に間違われるという事件があったんです。そこから6年経ち、卒業時には見た目に中身が追い付いたかなとは思いました(笑)。ちょっと真面目にいうと「医療人になった」ということが一番です。生命に直結する仕事に携わる立場として自覚と責任を持とうという気概を胸に卒業式に臨みました。

小原さん : 私は小、中学校と学校に通えなかった時期があり、北陸大学に入学した時もまだ自分に自信が持てず、人前に出ることが苦手でした。でも大学でさまざまなことを学び、友人と交流を深める中で、物事の考え方が少しずつポジティブに変化しました。「自分はこれができる」という自信は、就職やその後の人生において「自分はこんなことがしたい」と言える力になりました。
最後に、母校で学ぶ後輩へのメッセージをお願いします。
伊藤さん : 今でも連絡を取り合っている大学時代の友人がいますが、助けられることが多いです。友人だったり、人のつながりを大事にしてください。

小原さん : 大学時代は何でも自由に挑戦できる時期です。医療関連に限らず、興味を持ったことには何でもやってみて、視野を広げてください。
(2023年10月13日取材)