北陸大学卒業生 ロングインタビュー

10
大学教員・研究者としての
キャリアの原点は北陸大学
立命館大学法学部教授
中西 千香
龍谷大学文学部准教授
前田 哲宏
大学教員・研究者としての
キャリアの原点は北陸大学
立命館大学法学部教授
中西 千香
龍谷大学文学部准教授
前田 哲宏
立命館大学法学部教授
中西 千香
1996年北陸大学外国語学部を卒業し、愛知大学経済学部に3年次編入、卒業。静岡の企業や高等学校で中国語教育、中国語通訳に従事した後、愛知大学大学院中国研究科に入学し、2010年3月博士号取得。2009年愛知淑徳大学嘱託講師、2010年愛知県立大学外国語学部中国学科講師、2011年同准教授、2018年立命館大学法学部准教授、2022年より現職。
専門は中国語学、中国語教育。特に日本語母語話者がいかにスムーズに中国語を学んでいけるか、楽しく学びを続けていけるかを大きなテーマとして、中国語文法(特に現代中国語の前置詞)や中国語教育(レアリア*を使っての中国語教育)について研究している。 *レアリア…教育の補助として使われる「本当の物」のこと。
龍谷大学文学部准教授
前田 哲宏
1996年北陸大学外国語学部を卒業し、兵庫教育大学大学院学校教育研究科に進学。修士号取得。大阪市立の中学校で2年、奈良女子大学附属中等教育学校で14年にわたって英語教員の現場経験を積む。2014年奈良工業高等専門学校一般教科助教、2015年同講師、2016年同准教授。2019年より現職。専門は英語教育学。特に学習者の英語学習に対する動機づけが英語力に与える影響について研究している。
北陸大学に入学した経緯や、当時のキャンパスの印象をお聞かせください。
前田氏 : 僕は大阪出身ですが、母方のルーツが石川県にあり、金沢には幼い頃から何度も訪れていました。大阪に比べると金沢は自然豊か。淀川を見て育ったものですから、犀川や浅野川の流れを見ると心が洗われます(笑)。
北陸大学に入学した当初は松雲会館に入寮したので、いろんな地域からきている同級生と話すのが楽しかったですね。

中西氏 : 金沢出身の私にとって北陸大学は地元の大学です。もともと第一外国語として中国語を学びたいと考えており、高校の先生の勧めもあって進学を決めました。
どんな学生でしたか?
前田氏 : ひとことでいうと「調子に乗っていた」ですね。勉強より陸上部の活動に熱心で。ただ、いろんな人と出会い、先生方によくしてもらったことで、4年間で少しは周りのことが見られるようになったというか、ちょっとは落ち着いた人間になって卒業できたと思います。

中西氏 : 私もよくできる学生ではありませんでした。上には上がいるという状態でしたし、自分自身一番になりたい欲もなかったように思います。ゴルフサークルに入っていましたが、それも上位を目指すというわけではなく「なんちゃって」でした。本当にゆるやかで、楽しい大学生活を過ごしていたと思います(笑)。
学生時代の一番の思い出を教えてください。
中西氏 : 2年生のときの中国短期留学で、私を含め女子学生11名が現地の空港に取り残されるというハプニングがありました。なんとか自力で目的地の北京大学にたどり着くことができ、その時は大変でしたが、今となれば楽しい思い出のひとつになっています。

前田氏 : 学生時代の一番の財産は、かけがえのない友達に出会えたことです。授業が終われば遊びに行く、冬は医王山でスキーをするなど、楽しかったですね。今も連絡をとりあっていますし、僕が金沢に行く機会があれば、一緒に飲んだりしています。
北陸大学での「人生の転機」について、卒業後のキャリアとあわせて教えてください。
前田氏 : 私は現在、外国語習得に関する研究をしています。きっかけは、3年生のときに受講した松原先生の英語科教育法の授業です。初めて勉強が面白いと思え、大学院で学びを深めたいと考えるようになりました。
進学した兵庫教育大の大学院は、現職の教員が内地留学する大学院として有名で、同級生14人のうち12人が中学・高校の教員という環境でした。現場のリアルな話を聞きながら、2年間修士課程で学び、その後自分自身も中高の英語教員として現場経験を積みました。
龍谷大学の文学部に着任して5年になりますが、教養の英語に加えて教職の英語の授業を担当しています。自分が北陸大学で松原先生に教えてもらったことを、学生に教えているかたちです。

中西氏 : 地元金沢で過ごす4年間の大学生活は、私にとっては足りないものが多く、卒業時も現状に満足しない自分がいました。それでさらに新しいものを求めて、愛知大学に学士入学し、教員免許を取得したんです。そこから社会に出て3年働いた後、大学院に戻りました。絶対に博士課程に進みたいと思っていたわけではありませんが、良い師に出会い、幸い続けていきたいテーマがあったので、博士課程に進みました。その間、いろいろあったかもしれませんが、今こうして大学の教員ができています。
よくよく考えてみると、18歳のときから今に至るまで、私は中国語から離れたことはありません。北陸大学がキャリアの基礎、原点となったのは間違いありません。
おふたりとも大学で教鞭を執られています。今の教育や学生について感じていらっしゃることを教えてください。
中西氏 : 社会が目まぐるしく変化する時代ですが、そのスピードに負けず、「何歳までにどんな人になりたいか」を自分の言葉で明確にいえるなど、しっかりと考えている学生が多い印象です。ただ私としては、大学時代という最後のモラトリアムにあって、もっとゆったりと時間を過ごしてほしいとも思っています。

前田氏 : 同感です。今の学生さんはいろんなことを急かされていていますし、必要ない情報まで入ってきて対処しなければならない。僕は金沢でのほほんと4年間を過ごしました。与えられた時間は一緒ですが、今の学生は自分自身のために割ける時間があまりに少ない。また、真面目なことはいいことですが、どこかではっちゃけてもいいのではとも思います。
母校で学ぶ後輩にメッセージをお願いします。
中西氏 : 自分というものを持たずに流されてしまうと、やりたいことの照準が合わなくなります。勉強を含めてやりたいことを頑張っていれば答えはしっかり出てくるものです。前向きに進んでください。そのときに大事なのが、周囲の大人に相談することです。「周りとうまくやれない自分」と戦っている人も、吐露できる大人が近くにいると、道が開けます。大学の教職員にも勇気をもって話してみてほしいですね。

前田氏 : 金沢で美味しいものを食べて、よく遊んで、よく学ぶ。それが一番です。加えて学生時代の自分に言い聞かせるのであれば、もっと素直に周囲の人に感謝の言葉を伝えよう、ということがあります。友達、先生、バイト先の仲間、よく行くお店の人などなど。大学を卒業する時には、ちゃんと「ありがとう」を伝えるといいと思います。
(2023年9月22日取材)