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中小企業の従業員一人当たりの影響を分析して、『適材適所』の経営に

経済経営学部 マネジメント学科

津田 泰行 助教

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PROFILE

経済経営学部 マネジメント学科

津田 泰行 助教

趣味 ロードバイク,音楽鑑賞,野球

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Q.出身大学は兵庫県立大学ですよね。なぜ選んだのですか?

親に迷惑をかけたくない

金銭面で親に迷惑をかけたくないなと思って、自分の実力でできるだけ学費の安い大学となると国公立で、かつ通える範囲となると兵庫県立大学しかなかった。まあ、経営自体に興味はあったのと、学科名が「事業創造学科」でカッコ良さそうというのもあったけど(笑)

Q.大学生活はどうでしたか?

勉強しなかったけど友達には恵まれた

全然勉強していた記憶がなくて、正直、絶対みんなの方が勉強していると思う。当時はバイトと友達と遊ぶことしかしていませんでした。でも、この時期がコミュニケーション能力としても、生き方を考えるのも、とても良い経験になった。大学の時の友達とは、今でも連絡をとっていて、全員兵庫県は離れてしまったけど、どこかの地域に行くと必ず誰かいるから、会おうみたいな。勉強はしなかったけど、人間関係には恵まれたと思います。

Q.関西学院大学大学院に進学しようと思ったきっかけは?

中小企業経営者との会話が転機に

前職では中小企業の社長と話をすることが多かったんだけど、社長の話を聞いても分からないことが多かったのがきっかけです。もちろんなんとなくは分かるけど、自分は経営しているわけじゃないから、理論を学ばないとちゃんと理解できない。そのためには勉強するしかないと思っていた時に、たまたま県立大時代のゼミの先生と話して、一緒にいた大学院に通っている経営者の方からも誘われました。当時、先生は関西学院大学に移っていたので、では行きますという感じで進学しました。

Q.研究テーマについて教えてください。

中小企業の社員一人当たりの影響を分析

中小企業の経営を考えるのがメインです。中小企業は大企業と比べて、社員数が少ないでしょう。だから、社員1人が企業に対して1/10 とか1/20 の影響力を持っているわけですよ。これに対して大きい会社、例えばパナソニックとかだったら何万分の1になるわけで、1人あたりの影響はまったく違います。なので、皆さんが就職して中小企業に入ったら、会社に与える影響って実は大きいんです。

当然、企業に新しく人が入ってきたら、すぐに活躍できるわけではありません。この人に活躍してもらうためには、こんなことしなくちゃ、あんなことしなくちゃみたいな話が出てくるわけで、そういう対応を通じて、実は会社も変化していきます。「インクルージョン」と言って、今まで所属していた人と一体感を持った状態になるようにしながら、新しく入ってきた人の個性を尊重するために、会社が変化していきます。

つまり、社員一人当たりが会社に与える影響はどの程度あるのかというのを分析しています。このことは前職時代に中小企業の話をいっぱい聞いていて、社員さんの何気ない一言に経営者が衝撃を受けて会社を変えたというエピソードもたくさんありました。そんな経験から出てきたテーマかもしれません。

Q.研究の中でも今後力を入れたいテーマはありますか?

障がい者雇用は会社のためになる

特に重点的にやりたいのが障がい者雇用です。様々な問題があって、働くことが難しかった人を会社で活躍してもらえるようにする過程で、会社にどんな影響を与えるのかを調べています。障がい者雇用は、先ほど話した「インクルージョン」の考え方が一番はっきり表れるのではないかと考えています。

障がい者の人って体が動かせなかったり、できないことが色々ある一方で、例えば精神とかの発達に障害を持っている人は、ある特定の業務がすごく上手で秀でていたりする。そういう活躍できる場をちゃんと見つけることができれば、企業の仕事の割り振り型も変わってきますよね。今までは材料を持ってきて製造する作業までを全て一人でやらせていたけど、最初の材料選びの部分だけを健常者の方に任せて、残りの作業は障がい者の方にやってもらうと生産性が上がった、というような事例もあります。

障がい者の方も会社に対して 10分の1、20分の1の影響力を持っているわけで、障がい者の方の雇用をきっかけに「適材適所」を見つけることができれば、会社が変わっていって、最終的には儲け(利益)につながる。しかも、「適材適所」は障がい者だけじゃなく、働いているすべての社員さんにも考えることができるわけです。障がい者雇用って企業にとっては負担が大きい社会貢献のように見えるけど、実はまわりまわって会社のため、利益になるんですよというところを研究しています。

Q.大学の教員紹介ページで、「人の役に立ちながら、自分の幸せを損なわない生き方(経営)が理想」と書いています。こう考えるきっかけはあったのですか?

ラーメン屋でのバイト経験が原点に

大学2年から卒業するまでラーメン屋でアルバイトをしていたんだけど、最初は大将にボロッカスに怒られて、全然楽しくなかった。「もう帰っていいよ」って怒って言われたこともあります(笑)。バイトがしんどくて、「このおっさんに怒られないようするにはどうすればいいか」ってずっと考えていました。自分が得意じゃない作業ってやっぱりあるし、これをどうにかして回避したいなと思って、それは次第に「どうやったら怒られないで苦手なやり方を変えられるかな」と発想が変わっていきました。「こういうやり方じゃダメなんですか」とか、「これでも必要な作業ができると思うんですけど」って考えて話をすると、「ちょっと考えてみるわ」って意外に怒られなかった。営業終了後に「あの話なんだけど、俺が大事にしているのはこういうことだから、やっぱりこのやり方でやらせてほしい」と言われて、結局提案は認められなかったんだけど。

でも、そんな話を何回かしていくと提案が通るようになって。感覚的には半分以上受け入れてもらえて、どうしても考え方と合わない提案以外は結構スムーズに通ることが多くなってきた。だから、言いたいこと、考えていることがあればやっぱり言わないともったいないと思います。真剣に考えて「こうしたい」と言うと、相手も人間なので、意外とある程度はすんなりと受け入れてくれます。逆に、ダメな場合もなぜそれがだめだと思っているかを真剣に返事してもらえます。もちろん、こっちばかりが要求していたら申し訳ないから、その代わりに自分ができることはやる。ラーメン屋の時でいえば、大将が怒ると怖くて何も伝わらないから、僕から作業の手順を教えたりする役割がありました(笑)。

誰でも得意としていることはあって、それが活用できたほうが人の役に立てます。うまく自分の得意な役に立つことをやって、自分が得意でないことはより得意な人がいればその人にお願いして助けてもらう。これが「世の中への役に立つ」ことと「自社の利益を確保する」バランスだと思っています。僕のラーメン屋の例でいえば、大学最後の半年間は家賃出してあげるから働いてくれって部屋まで借りてくれるくらい大将と仲良くなりました。最後は週7日働いていたので、あだなは社員でしたけど(笑)。 

今の学生たちへ

MESSAGE

先生が北陸大学の学生に想うことや、
高校生へ伝えたい想いなどをお聞きしました。

MESSAGE.1

自分のできることに誇りを

北陸大学の学生たちへ

もっと自信を持ってほしい、必要以上に自分を低く見せないでほしいと思っています。例えば、世の中にある大半の中小企業はデータ分析ソフト『tableau(タブロー)』を触ったことが無いどころか知りもしないけど、北陸大学では必修なわけで、皆さん操作することができます。みんな大学生活を通じて、身につけているものがあるのに、自分たちで「たいしたことない」と評価を下げちゃったら、身につけたものを発揮する機会もなく終わってしまうよね。これは本当にもったいないと思います。だから、背伸びする必要はないけど、今までやってきたこと、自分ができることをちゃんと理解してほしいなと思います。そうしないと、ネガティブな方向にしか話が進まなくて、それぞれの個性が発揮されるような「インクルージョン」が起こらないので(笑)。自分のできることに誇りを持ってほしい。しょぼい方に考えるのは今日でおしまいにしよう!

MESSAGE.2

得意なことはちゃんと意識を

高校生へ

普通に生きていると自分は思っていても、自分しか経験したことがないことは実はたくさんあると思います。僕でいえば、「大学時代にラーメン屋でバイトをしていた」と言えば「普通」ですけど、週7働いていたという経験はあまり経験した人はいないと思います(笑)。そんなふうに、「もしかしたら自分しか経験していないかもしれないこと」をちゃんと覚えていてほしいし、ずっと心の中に持っておいてほしい。例えば「スポーツをこのぐらい頑張った」でもいいし、あるいは「中学のこの授業だけは面白かったからめちゃくちゃ頑張った」とか、すごいピンポイントでもいいです。それが本当に「自分だけしかしていない経験」だったり、他の人よりも頑張っていたんだなとわかったら、自信につながります。

人間って結構単純なので、中学生ぐらいから自分の中にある意識や感覚ってあまり変わらないと思っています。当然、得意なこともそんなに大幅には変わりません。これが歳を取っていくと、そのまま「才能」と言われるようなものになると思います。今からでも、自分が得意なことをちゃんと意識して覚えておいてほしいです。「うまくいったな」という出来事は、うまくいったという記憶だけじゃなくて、自分は何が得意でうまくいったのかというところまで思いを巡らせてくれたら、それは自分の将来につながる才能になります。自分の経験を才能として社会で活用して、皆さんも社会に「インクルージョン」してもらえたらと思います。

インタビュアーコメント

INTERVIEWER COMMENT

実際にインタビューした学生が、
先生の新たな発見や魅力について記録します。

INTERVIEWER COMMENT

津田先生はとても気さくで、先生と学生という距離感が全くありません。このインタビューには書けなかったことも沢山聞きました。そういう人生があったから、いまの学生に優しい津田先生がいるのだなと思いました。津田先生が北陸大学に来てくれて本当によかった。今後も長くいてください。ありがとうございました!

INTERVIEWER 水野 あい、高橋 優太朗、竹原 彩加、瀧中 健司 撮影:渡邉 希樂

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