岡山 裕美 講師
- TEACHER’S KEYWORD -
Q.理学療法士の道を選んだ理由は?
バスケの試合を見て・・・
もともと小さい時から医療職に就きたいと思っていたのですが、実際に決めたのは高校3年生の頃です。高校生の頃はバスケットボール部のマネージャーをしていて、テーピングを巻いたりするのがすごく楽しくて、当時はトレーナーになりたかったんですよね。
私が所属していたチームはそんなに強くなかったので、チームが負けた後も強いチームの試合をよく観に行っていました。ある試合でセンターが怪我をして、ベンチに戻ってしまったんですよね。このセンターがいなければこのチームはもう負けてしまうだろうって思っていたら、ベンチの横にいた、今思うと鍼灸師さんだったと思うけど、その人が何かをした後にまたセンターがコートに戻ってきて。
そのシーンを見て、私はやっぱり人をサポートしたいなぁって。で、最初に思いついたのがトレーナーや柔道整復師でした。進路に迷っていたら、学校の先生が理学療法士という職種があるよと。スポーツだけで食べていくのは大変だから、理学療法士はどうかって。それで、調べてみたら、結構面白い、色んなことができそうだなと思って理学療法士になることを決めました。
Q.実は私の姉が柔道整復師なんですよ。理学療法士との違いは何ですか?
へえ、そうなのですね。理学療法士と柔道整復師の大きな違いは、理学療法士は医師の指示のもとで働く仕事なので独立して開業ができないということです。これに対して、柔道整復師や鍼灸師は医師の指示がなくても仕事ができるので、整骨院とかを開業する人が多いという特徴があります。
Q.さっきバスケ部のマネージャーをしていたと言っていましたが、頑張ったことはありますか?
やっぱサポートって楽しい
トレーニングメニューを考えたり、テーピングの巻き方を調べて練習したりしていました。マネージャーっぽくはないんですけど、朝練に参加して一緒にシューティングしたり、外練の時は一緒に外を走ったりしていましたね。もちろん、授業後の練習の時はテーピングを巻いたり、スコアブックを書いたりしていたのですが、個人的にバスケットボールをしたかったというのがあって。部員になればとだいぶ言われたけど、やっぱりサポートするのが楽しかったので、マネージャーは辞めませんでした。
Q.その後、理学療法士を目指して大学に進学したわけですね。どうでした?
時間を有効活用する毎日
めっちゃ楽しかったです。1期生で先輩もいなかったので自由にやっていました。もちろん授業は厳しかったので、みんなで休みの日や休み時間は図書館で勉強していました。私は家では勉強をしませんでしたね。空きコマを利用したり、授業中に質問をしたりして、時間を有効活用するように心掛けていました。学校が終わったらすぐにアルバイトだったので。
Q.アルバイトは何をしていたのですか?
スポーツクラブで社会人としての基本を学ぶ
運動している人の近くで働きたいというのもあって、大手スポーツクラブでアルバイトをしていました。この会社はアルバイトでも研修が充実していて、お客様への声の掛け方や電話対応など、社会人としての基本を多く学びました。アルバイトも正社員と同じように扱われていて、責任感とともにやり甲斐もありましたね。
Q.大学では何を研究したのでしょうか?
ブラジル体操に興味
ストレッチングです。ちょうど高校時代にブラジル体操というのが流行っていたんですよ。私が通っていた高校のサッカー部やラグビー部が、ウォーミングアップとしてブラジル体操を行っていました。当時、静的なストレッチングは体育の授業でもするし、色んなエビデンスも出ていたのですが、動的なストレッチングはそこまでではなかったので、じゃあそれを研究テーマにしようと。それをしたら何が良くなるのかというのをちゃんとデータで確認できたら面白いなと思って研究テーマにしました。
Q.患者さんと接する上で意識していることはありますか?
同じ目線で考える
これは患者さんだけでなく、学生に対してもそうなのですが、できるだけ互いを尊重する対等な関係でいれるよう接したいと思っています。理学療法士と患者さん、教員と学生という立場だと、距離感が遠くなってしまいやすいですが、なるべく相手と同じ目線でいたくて、同じ目線に立って物事を一緒に考えたくて、何でも言ってもらえる存在でありたい、そう思っています。距離が近すぎると慣れが出てきてしまうかもしれないけど、それはそれでいいんじゃないかなって思っています。
Q.同じ目線で接するために気をつけていることはありますか?
自分をさらけ出す
自分をさらけ出すことですかね。自分が失敗してきたこととか、自分の恥ずかしい部分とかをちょっとずつ話したりすると、相手もちょっとずつ心を開いてくれる。そうやってコミュニケーションを取るようにしています。
Q.経歴を見ると、大学を卒業してから一度、就職をしたようですが。
熱い想いはなかったけど
最初は病院に勤めて、その後、働きながら大学院に行きました。働き始めて2年目の冬に後輩が大学院に行きたいと言い出して、当時の上司(今の学科長)から一緒に説明を聞いてこいと言われたんですよね。当時は進学するつもりはなかったのですが、説明くらいならと思って一緒に聞きに行ったのですが、その後輩が突然、大学院にはやっぱり行かないと言い出して。先方にせっかく時間を割いてもらったのに申し訳ないという気持ちがあって、じゃあ私が行きますと(笑)だから、他の研究者のように、この研究したいという熱い想いがあったわけじゃないんですよね。でも、そこで人生が変わりました。
Q.教員は大学院に入って目指したのですか?
病院で教えることの楽しさに目覚める
当時は教員になろうとはまったく思っていませんでした。教員を意識し始めたのは病院で働き始めて5〜6年経った時ですね。働き始めて3 年目くらい、大学院に入った時くらいから実習に来る学生を指導する立場になって、その時から学生に教えることがちょっとずつ楽しいと思い始めて。それで、5年目くらいになると、年間を通じて色んな学生を指導しながら患者さんを診る生活になっていて、そのあたりから教員もいいなって。
勉強って学生だけがしているんじゃないんですよね。教えることで、指導者も教員も学んでいる。学生の素朴な疑問に答えられなかったりすると、自分に対するフィードバックにもなる。だから私は指導することが大好き。もちろん、仕事量は増えてしまうけど、その分自分も勉強できているなって実感があるから。
Q.大学院の研究テーマもブラジル体操?
そうですね。もうちょっとしっかり詰めた方がいいんじゃないかということで同じようなテーマで研究しました。使用する機器をもうちょっと増やしたりとかして。
Q.研究テーマを高校生にも分かるように説明してもらえますか?
スポーツ復帰の指標に「感覚」を
ACL断裂(*)した場合、その後からスポーツ復帰に向けてリハビリテーションを受けます。スポーツ復帰するまでに、手術してからの期間や筋力などいくつかの指標があるのですが、その中でまだ確立されていないのが、感覚です。ACL 損傷した側は怪我をしていない側と比べると関節の動いている方向や動いている範囲が分かりにくくなると言われています。でも、それに対してどうなったら復帰しても良いというのがクリアじゃなくて、指標として用いられていないのが現状。この感覚が鈍くなることで、発揮する筋力の調整をする時に一生懸命頑張らないといけなくなります。関節の動きが感覚的にコントロールできているか、そういうことを客観的に示すことができたら、スポーツ復帰のひとつの指標になって、再び怪我をすることはなくなるのではないかと。
一度ACLを損傷してしまうと、膝がどれくらい曲がっているとか、その感覚が鈍ってしまっているから、再損傷しやすくなるんですよね。特に女性は膝が内側に入るような姿勢を取りやすかったりするので、再損傷リスクが高い。そのあたりを明確にできたら怪我をしない体作りができるんじゃないかと思っていて、今年はこれをやろうと思っています。いまは女子バスケットボール部に関わらせていただいているので、研究を進めて得た結果をもとに何か還元できれば良いなと。
(*)前十字靱帯断裂。膝関節の靭帯が断裂した状態を言い、スポーツ中に損傷することが多い。
Q.博士号も似たようなテーマだったのですか?
その時にやりたいことをやる
博士号は歩行の効率がテーマでした。歩行速度や筋肉の活動などを指標に効率の良い歩行とは何かについて研究しました。なので、全く違います。修士もストレッチングですし、その時にやりたいことをやっている感じ。ずーっとこれを研究していますってタイプじゃないですね。基本的には筋肉が好きなので、すべて筋肉には関連していますが。
MESSAGE
先生が北陸大学の学生に想うことや、
高校生へ伝えたい想いなどをお聞きしました。
INTERVIEWER COMMENT
実際にインタビューした学生が、
先生の新たな発見や魅力について記録します。
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INTERVIEWER COMMENT
インタビューを通して、積極的に動くことの大切さを学びました。岡山先生が歩んできたキャリアは、積極的に動いてきた結果であり、その中で好奇心や新しいものに触れようとする意欲があったからだと思います。私もこれから、積極的に動き、経験を積むことが出来たら良いなと思いました。ありがとうございました。