令和6年1月1日に発生した能登半島地震は、透析を行う医療機関にも深刻な影響をおよぼし、停電や断水などにより、多くの施設が透析不能となりました。その結果、約400名の患者が透析難民となり、金沢市内などの県内23の医療機関へ移動し、支援透析を受けることになりました。患者の中には重症度が高く、高齢でADLの自立が困難な方もおり、家族と離れて入院生活を余儀なくされるケースもありました。また、二次避難所を拠点に透析施設への移動を繰り返すことや二次避難所での生活も期限があることなどから精神的な安寧が保障されない状況となりました。このように、二次避難には医療アクセスの難しさや精神的負担、社会的孤立感、生活様式の変化、経済的負担など、多くの問題を伴います。これまでの研究では、透析患者の一次避難についての報告は多くあり、発災時の対応などはある程度周知されてきました。しかし、透析患者の二次避難や長期避難生活による透析治療への影響は調査されていません。
そこで本研究では、透析患者の長期避難生活の実態を調査し、適切な支援方法を検討することを目的としました。具体的には、治療の継続確保、適正な医療の維持、心理的な安心感の提供、社会的な繋がりの維持、災害対応体制の構築、経済的支援の提供を通じて、患者の健康と生活の質の向上を目指します。
今後、調査データを収集、解析し、具体的な問題点とその解決策を明らかにし、政策提言や災害時における透析患者支援のための具体策の提案も行います。さらに、医療機関や行政との連携強化、災害時の対応体制の整備にも取り組み、透析患者とその家族、医療従事者に対して災害時の対応や支援策に関する教育と普及活動を実施することを考えています。
私が考えるウェルビーイングな社会
コミュニティのつながりを強固にし、相互に支え合う文化を根付かせること。自然災害やその他のリスクから人々を守るための対策を講じ、安心して生活できる社会。