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思いやりを育む
学級づくりを

国際コミュニケーション学部 心理社会学科

仲嶺 実甫子 講師

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  • #臨床心理学
  • #教育心理学

PROFILE

国際コミュニケーション学部 心理社会学科

仲嶺 実甫子 講師

趣味 サイクリング、登山

2012年/琉球大学教育学部生涯教育課程教育カウンセリングコース卒業
2014年/琉球大学大学院教育学研究科臨床心理学専攻修了
2018年/関西大学大学院心理学研究科心理学専攻博士後期課程教修了
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Q.中高校時代はどんな生徒でした?

みんなで何かを作り上げるのが好き

そうですね、中高時代はあまり勉強を頑張る生徒ではなかったかと思います。どちらかというと、クラスでイベントをするとか、みんなで何かを作り上げるのがすごく好きだったという記憶がありますね。

高校時代は友達にすごく恵まれたと感じています。私の友達の多くは自分がどんな仕事に就きたいか、どう生きていくかについてよく考えていました。高校は自分の進路を決める大切な時期。そうした時期に自分の人生について深く考えるきっかけを与えてくれた友人と過ごせたのは、本当に良かった。友達とは今でも仲が良くて、この出会いは今の自分に大きな影響を与えていると思っています。

Q.そして琉球大学に進学したわけですね。

本当は別の大学を志望していたのですが、そこには受かりませんでした(苦笑)浪人しても良かったのですが、自分には浪人は合わないという感じがして、合格した琉球大学に進学しました。

Q.なぜ心理学?

苦しんでいる子を支えたい

私は子どもに興味があったので、子どもが学校に行けない、あるいは不登校や対人関係の問題などで苦しんでいることがあれば、その子たちを支えるお手伝いができればと思って、心理学の道を選びました。それが学べるのが琉球大学でした。

Q.どんな大学生活でしたか?

ゼミで研究の楽しさを教わった

琉球大学の1年生の時は遊んでいましたね。それはそれで楽しかったのですが、3年生になって入ったゼミが人生の転機となりました。ゼミの先生は教育熱心で、心について学問する面白さや、研究する楽しさを教わりました。ゼミでの経験が今の自分につながっていると思います。その後、臨床心理士を取るために修士課程に進学しました。高校時代から人と何か作っていくというのが好きだったので、みんなで議論して何かを生み出していくという大学院の日々はとても充実していました。

Q.博士課程への進学に迷いはなかったのですか?

できるかできないかじゃなくて、やるかやらないかだ

私にその能力があるのか不安もありましたが、ゼミの先生の「できるかできないかじゃなくて、やるかやらないかだ」ということばを思い出しました。家族も私がやりたいことをすればいいと応援してくれました。できるかどうか分からないけど、やりってみたいと思って、博士課程に進学しました。先生方との出会いや、ゼミの先輩、同期、後輩に恵まれたことが心理学にのめり込んでいくきっかけになったと思っています。

Q.ところで、ゼミはどう選んだのですか?

役に立つ心理士になりたい

1年時にオムニバスの授業で色々な先生の授業を受けるのですが、その時からこの先生はいいなって思いました。

どの資格もそうだと思うのですが、資格を持っているだけでは駄目で、腕を磨いていく必要があります。大学に入る時に、学校の先生だった友達のお母さんに臨床心理士を目指して大学に進学をすることを話したら、スクールカウンセラーは役に立たないと言っていました。これからカウンセラーになろうと思っている時だったので、かなりショックでしたが、なら私は絶対に役に立つカウンセラーになってやろうと思って大学に入りました。

そんな時、オムニバスの授業で先生が役に立つ心理士ということを話されていて、すごいグッと来ました。絶対に役に立つ心理士になってやるという思いを強く持っていたので、先生が話されていることに共感して、それでこの先生につきたいと思いました。

Q.研究テーマは?

いじめ問題や対人関係を心理学からアプローチ

子どものいじめ問題や対人関係の問題にアプローチするための心理学的介入方法を研究しています。学級集団を対象に心理学的なプログラム、みんなで心理学的なレクリエーションしたり、ワークしたり、道徳の授業などで行ったりするのですが、そういったプログラムに参加することで、良い友達関係を築いたり、友達のことを思いやれたりする、そんなことについて研究をしています。

子どもにとって学校のインパクトって大きいですよね。大人は色々な世界を持っていますが、子どもは学校が社会とのつながりのほぼ全てだったりする。だから、そこがどのような場であるかは子どもにとってとても重要だと思います。学校に自分を受け入れてくれる場がなかったり、自分に攻撃的であったり、そういう場に学校がなってしまうと、子どもは非常に苦しくなってしまう。だから、調和をもって過ごせる学級づくりができたらいいなと思って、その学級集団への心理学的な介入プログラムについての研究を修士課程の時に始めました。博士課程、そして今もその研究テーマを追い続けています。

Q.研究で難しい点は?

新しいことを始める時は、苦労はつきもの

私が扱っているのはコンパッション(思いやり、慈しみ)という概念なのですが、中学生を対象に用いることの難しさは感じています。思春期は自分のことで精一杯。恥ずかしさや周りの目を気にして、友達に優しさを示すということに抵抗がある子もいたりする。中学は対人関係の問題がすごく増える時期です。ですので、この時期を狙ってアプローチしたいという気持ちは強いのですが、プログラムの効果を得るには解決しなければいけないことも山ほどある。それは、まだ解決していなくて、今でもどう扱ったらいいのか考える日々です。

この研究を始めた当初は、この概念が日本の学校現場に浸透しているわけではないので、これをやることの意義等を理解してもらうことをすごく難しいと感じることがよくありました。でも、最近はこの概念に関する研究を学会でも良く聞くようになりました。博士課程の時の先生から「新しいことを始める時は、周りにそのことについて説明し、理解してもらう苦労はつきものだ」と励まされていたのですが、今でもそれが研究を行っていく上で励みになっています。

Q.今後は何に取り組んでいきたい?

安心して過ごせる学校づくりは長期テーマ

広い意味では、やはり先生にとっても子どもにとっても過ごしやすい、相互に思いやりを持つことのできる学校づくりをしていきたいですね。教師という仕事はストレスのかかる仕事なので、教育にあたるエネルギーが底をついてしまうこともあります。元々は教育熱心で優しい先生だったのに、置かれた環境や状況によって熱心になれなくなったり、子どもにサポーティブに関われなくなったりすることもやはりある。当然、その影響は子どもにも及びます。先生にもサポートは必要なわけです。求められるものが大きい上に、業務量も多いので、そういう中で疲弊してしまう。これは長いスパンで取り組んでいくテーマになると思いますが、みんなが安心して過ごせる学校づくりに携わるができたらと思います。

Q.学校におけるスクールカウンセラーや心理士の役割について教えてください。

先生と子どもが良い関係を築けるように間に入る

私もスクールカウンセラーとして勤務していたこともありましたし、学校現場に入って仕事をすることもあるのですが、心理師(士)は心理学的な見方をするのでやはり子どもを見る見方は、学校の先生と心理士は少し違うように思います。ですので、色々な人が色々な角度から子どもを見ることは、子どもに対する理解を深める上ですごく役立つことだと思っています。あと、学校の先生は1人で40人とかそれくらいの子どもを見ているので、じっくり話を聞いて今起きていることを整理したり、これからのことを予想したりすることは、時間的にすごく難しい。そういう事情があるので、特に困り感の強い子に関してはカウンセラーが話を聞いて、今この子はこう考えていて、こうしたいと思っているようなので、こうしてくれると学校に行きやすくなるみたいですよと先生に伝えると、先生もその子の知らない一面を見ることができる。私がスクールカウンセラーをしていた時、色々と相談をしてくれる先生もいましたが、子どもが思っていることを整理して先生と共有すると先生も新しい視点を得たような反応をすることがありました。先生と子どもが良い関係を築くことができるように関わっていくことは、心理士やスクールカウンセラーができることの一つだと思います。先生と子どもがうまく関わることができていない時に、カウンセラーが間に入ることで、この子はこういう子ですよ、こんなことを考えていますよと、代弁者になることができれば、先生も子どもに対する理解が深まったり、イメージが変わったりすることがありますし、子どもも先生は自分のこと分かってくれているという安心感の中で学校生活を送ることができます。

今の学生たちへ

MESSAGE

先生が北陸大学の学生に想うことや、
高校生へ伝えたい想いなどをお聞きしました。

MESSAGE.1

育っていく素養を持っている

北陸大学の学生のイメージは?

私が所属する心理社会学科は1年生しかいませんが(2021年4月開設)、熱心に学んでいるように思います。心理学というのは文系のイメージを持たれますが、統計学を使うなど、科学的な研究方法を身に着けることも重要です。そういった領域は理解するのにすごく難しいところもあるのですが、みんな一生懸命やってくれています。国際コミュニケーション学科の学生とも関わる機会がありますが、その子たちも含めて素直だし、育っていく素養を持っている子たちだなと感じます。楽しく関わらせてもらっているし、教育しがいがあるなと思っています。

MESSAGE.2

誰かに自分の人生の決定を委ねない方がいい

高校生へのメッセージ

子どもと関わることが多い中で感じるのは、誰かに自分の人生の決定を委ねない方がいいなと。例えば親がこう言うから、先生がこう言うからという理由で人生を決めるのではなく、自分が何を面白いと感じるか、何をしたいか悩んだ方がいい。そうしないと、その後の人生を生き生きと過ごせないと思います。自分がやりたいことは何なのか、どういうことを極めたいのか、どういう大人になりたいのか、何でもいいけど、自分で考え抜いて決める。他の人に決めさせない。自分の決定に責任を持って進んでいった方が、充実感のある人生を送れると思います。どんな進路を選ぶにしても一生懸命考えて選び抜いてほしいと思います。

インタビュアーコメント

INTERVIEWER COMMENT

実際にインタビューした学生が、
先生の新たな発見や魅力について記録します。

INTERVIEWER COMMENT

仲嶺先生には、携わっている研究や人生観などをお聞きしました。先生の研究テーマは様々な悩みを抱える子どもにとってとても大切だと思いました。また、スクールカウンセラーについての理解も深まりました。「できるかできないかじゃなくて、やるかやらないかだ」という恩師の言葉が印象的でした。心理学の力で学校の現場を変えて欲しい、そんな思いを持ったインタビューでした。
(取材日:2021.10.5)

INTERVIEWER 吉田 紗弥香 中﨑 楓 野本 桃花

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