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がん教育でがんによる死亡率を下げていきたい

薬学部 薬学科

畑 友佳子 助教

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  • #初年次教育

PROFILE

薬学部 薬学科

畑 友佳子 助教

趣味 ハーブ栽培、絵本収集

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Q.中高生の時に熱中したことがあれば教えてください。

バンドブームで軽音サークルへ

熱中したことはそんなにないんですよね。部活動とかをやっていたわけでもないので。ただ、世代的にバンドブームだったので、誘われて軽音楽のサークル入って歌ったり、そういうことは一生懸命しました。

Q.ちなみに何のバンドが好きだったんですか?

当時はプリンセスプリンセスが大流行していた時代なので、そのコピーをやってましたね。

Q.北陸大学薬学部出身とのことですが、大学を選んだ理由を教えてください。

地元・北大薬学部へ

薬学部に進学したかったのですが、家庭の事情で地元という縛りがあって、結局、金沢大学と北陸大学を受験しました。で、金沢大学は落ちたので、こっちに来たと。後ろ向きな理由ですいません(苦笑)ただ、結果的に、北陸大学に入学してよかったなと感じています。学風というか、北陸大学の雰囲気が私には合っていたかな、と思っています。実は、他大学の理学部には受かったのですが、やはり薬学を学びたかったので北陸大学に決めました。

Q.なんで薬学部に進学したかったのですか?

祖父の夢を叶えるために

実家が町の薬屋さんをやっていたので、その跡継ぎということで薬学部を目指しました。昔は薬種商といって、薬局じゃなくて薬剤師不在の薬屋さんがあって、うちもそれだったのですが、祖父が薬種商を薬局にしたいという夢を持っていて。なので、子どもの頃から薬学部、薬剤師とずっと言われ続けてきたんですよね。成長するにつれて私のやりたいのは本当にこれなのかと迷った時もありましたが、まあ大きくは好きな分野だったので、今に至っているという感じです。

Q.大学生活はどうでしたか?

勉強も遊びもほどほどに

普通の学生でしたね。特別優秀だったわけでもないし、勉強も遊びもほどほどみたいな。だから大学時代にこれに打ち込んだという印象はあまりありません。まあ、勉強が大変だったということもあるんですけどね。

Q.勉強が大変だった?

実験とレポート提出を繰り返す日々

日々の課題をこなすので精一杯でした。実験してデータを出して、それをまとめてレポートにするという実習科目があったんですけど、本当にレポートを書いて出す、書いて出す、を繰り返す毎日でした。今のカリキュラムより実習の時間数が多くて、実験して翌日にはレポート提出するというのがかなりあったんですよね。で、4年になったら今度は研究室に所属して卒業研究に没頭する毎日。それこそ深夜まで実験して、日付をまたいだら帰ってお風呂に入って寝る、そんな日もありました。深夜帰りが続いたある時、たまたま今日は20時に帰れるという日があって、あまりに嬉しくて泣いてしまって、周囲をびっくりさせてしまいました。それくらい打ち込んだ時期もありました。当時はしんどかったんですが、今となっては良い思い出であり、貴重な経験だったと思っています。

Q.その後、北陸大学に就職したのですか?

教授から助手の誘い

そうです。大学を4年で卒業して(※1) 、実験助手という形で就職しました。私は、祖父の意を汲んで薬学部に進学したわけですが、ちょうどその頃、薬業界が大きな転換期を迎えていました。いわゆる“医薬分業”(※2)が進み、町の薬屋さんは調剤薬局に姿を変えていきました。同時に、大手のドラッグストアも調剤薬局を併設して店舗数を増やしていました。我が家も、調剤薬局の開設に向けて準備を進めてはいたのですが、結局、それを断念することになったんです。で、急に、跡継がなくていいよ、と。

就職するなら病院かなあとぼんやり考えていた4年生の夏に病院実習を経験しましたが、私のやりたい仕事はこれだったんだろうか、と疑問を持ってしまったんです。ほかにも友人に誘われるままに企業説明会などにも参加しましたが、どれもピンと来ず。そんな中、所属研究室の教授から実験助手になる気はないか、とお話をいただきました。実験や研究は好きだったし、なにより幼いころから教育に興味があったので、チャレンジしてみようと思いました。

Q.そこから研究人生が始まるわけですね。いまの研究テーマを教えてください。

がん治療と初年次教育

研究も色々やっていて、いわゆる実験系の研究と、教育系の研究をやっています。実験系の話からすると、4年生の卒業研究の時に所属していた研究室に就職したので、そのまま継続してがん関連の研究をしています。最初はがんに効く薬を探そうみたいなことをやっていましたが、所属していた研究室が放射線に関する研究室だったので、今は放射線のがん細胞に対する影響に注目してやっています。ゆくゆくはがん治療(※3)に応用できればいいなと思っています。

教育研究の方は――最近はこっちの方の学会発表が多いのですが――初年次教育の研究をしています。入学してすぐの学生に何とか大学生になってもらおうということで、学習に対する心構えとか、薬学部なので薬剤師に必要なマインドとか倫理観とか、そういうことを低学年の時に教えるのですが、その実践報告、こういう手法でやったら学生はこれだけ伸びてくれたとか、そういう研究をしています。

Q.いま倫理観という話が出てきましたが、薬剤師に必要な倫理観とは?

ジレンマに向き合う

まず一般的な倫理観はもちろん大事です。広い意味で道徳的なマナーとかルールとかそういうのはもちろん大事なのですが、薬剤師はそれだけじゃだめなんですよね。医療の現場では、生と死に対峙する場面がすごく多い。そういう場面では色々なジレンマが生じます。例えばがんの末期患者さんがいて、治療を続けるか続けないかという問題があります。医療スタッフの立場からしたら治療を続けて少しでも長生きしてもらいたいという気持ちがあるけれど、患者家族はこれ以上治療で苦しむ姿を見たくない、楽にしてあげてほしいと思ってるかもしれない。最終的には皆で話し合って決めるわけですが、そこで薬剤師としてしっかりと意見、考えを持って発言できるかどうか。そういう場面に対応できるようになるには、日頃からそういう問題に関して考えたり、倫理観を高めていく必要があります。

Q.研究テーマは教育とがんの2つあるとのことですが、今後、とくに注力していきたい 研究はありますか?

がん教育でがんによる死亡率を下げていきたい

両方やっていきたいですね。研究テーマの中にはがん教育(※4)というのも少し含まれているのですが、これもやっていきたいです。今、文部科学省は学校教育の中でがん教育をやってくださいと言っています。これを受けて、学校は講師として誰かを呼んだり、保健の先生が教えたりしていますが、この分野に私みたいな立場の人間や薬剤師がもっと関われるのではないかと思っています。がんというのはこういう病気ですよ、こういう治療法がありますよ、がんにならないためにこういう生活を送ってくださいねとアドバイスしたり、私たちができることはいろいろとあるはずです。

今、がんは早く見つければ治る病気になりつつあるので、教育を通じて検診を推奨したいという思いもあります。実は病院で検診を受ける時によく使われるのが放射線なんです。分かりやすいのはレントゲンとかCT(コンピュータ断層撮影) ですが、がんの治療にも放射線が使われています。切らなくても分かるので治療にも役立つのですが、放射線を浴びるので被曝リスクもあり、なかなか検診率が上がらない(※5)。なので、教育でがん検診の受診率を上げることによって、がんの死亡リスクを下げていきたい。放射線に関して、細胞の話と教育の話を融合する形で研究ができるのではないかと思っています。まだアイデアの段階ですが、そういうことも考えながらやっていきたいですね。

(※1)2006年度以前、薬学部は4年制でした。

(※2)医薬分業とは、薬の処方と調剤を分離し、それぞれの専門家である医師、薬剤師が分担して行うことを意味しています。

(※3)現在、がん治療の三本柱は「抗がん剤による化学療法」、「外科的な手術」、「放射線治療」とされています。このうち、「放射線治療」は、身体にメスを入れることなく治療が行え、がん細胞消滅後は温存された臓器の機能が戻ることから、患者さんの身体的負担が比較的少ない治療法と期待されています。

(※4)文部科学省は、2007年に策定された「がん対策推進基本計画」の第2期計画において、学校での健康教育の中で「がん教育」を推進することを掲げ、「がんについて正しく理解することができるようにする」、「健康と命の大切さについて主体的に考えることができるようにする」ことを教育の目標としています。

(※5)日本におけるがん検診の受診状況は、最も高い肺がん検診でも男性53.4%、女性45.6%です(厚生労働省「国民生活基礎調査」令和元年度報告)。がんは早期発見によりその後の生存率が高くなることもあり、国はがん検診の普及に取り組んでいますが、そのほかのがん検診でも受診率が50%を超える検査はなく、低水準となっています。

今の学生たちへ

MESSAGE

先生が北陸大学の学生に想うことや、
高校生へ伝えたい想いなどをお聞きしました。

MESSAGE.1

「コツコツ真面目に」が伸びる

薬学部を志望する高校生へ

高校生のうちは興味のあることは何でもやってほしいと思います。色々な経験を積んで、心を豊かにしてほしい。薬剤師は人と関わる職業なので、どんな場面に遭遇しても臨機応変に対応できる力を身につけてほしい。それにはやはり経験が大事。小さな子からお年寄りまで、色々な世代の人の交流してほしいと思います。

あと薬学部を続けるには、コツコツと真面目に取り組む子が実は伸びる。最初は学力があまりなくても、アドバイスを素直に聞き入れてコツコツやる子が最後すごく伸びてくる。なので、少しでいいから積み重ねることができる人になってほしいと思います。

MESSAGE.2

自分で答えを見つける

北陸大学の学生へ

色々な経験を積んで、どんな場面にも対応できる人になってほしいと思います。あと、自分の頭で考えて自分なりの答えを見つけてほしいですね。今までは言われたことだけやって、当たり障りのない答えを出して終わっていたかもしれないけど、自分は本当はこう思ってるんだということを表現できるようになってほしい。社会に出たら答えがない問題に直面することも多くあります。その時、答えは自分で見つけなければいけない。それに対応できるようになってほしいと思います。

インタビュアーコメント

INTERVIEWER COMMENT

実際にインタビューした学生が、
先生の新たな発見や魅力について記録します。

INTERVIEWER COMMENT

畑先生のお話を聞いて、コツコツと日々の努力を積み重ね、そのおかげで今の先生があると感じました。私も先生のように、能動的に課題解決に取り組み、努力を続けていきたいと思います。(宮田 怜奈)

畑先生の学生のためを思った倫理観教育や、癌治療の機会を増やし、苦しむ人を救いたいという思いから、人に対する奉仕の思いが強い方だと感じました。薬剤師として、強い使命を持って取り組まれる姿勢を尊敬しました。(山下 真由)

INTERVIEWER 宮田 怜奈 山下 真由

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