北陸大学薬学部
2006年度 授業計画
SYLLABUS

科目名 配当学年・開講期 単位数 選択・必修 担当教員名
天然物化学系実習 3年次・前期 1 必修 木津 宮一 劉 川田
佐藤 畑 矢口

授業の目的・目標

 生薬学の講義で学んだ事柄について理解を深めることを基本とし,1.生薬から目的物質を純粋に分離・精製し,種々の化学的所見に基づき得られた物質を同定する。2.日本薬局方収載生薬の確認ならびに純度試験を行なう等,生薬成分の取り扱いに関する基礎技術を習得する。3.漢方湯液,薬膳作りと試飲試食を通じて東洋医薬学に馴染み,実習期間を通じて実際に生薬に触れ,観察し,鑑定力を養う。以上を目的として本実習を行なう。

授業の到達目標

1.代表的な生薬を列挙し,その特徴を説明できる。
2.代表的な生薬を鑑別できる。
3.代表的な生薬の確認試験と純度試験を実施できる。
4.天然物質の代表的な抽出法,分離精製法を列挙し,実施できる。
5.代表的な漢方処方の適応症と配合生薬を説明できる。

単位の評価方法

 実習態度,筆記試験,生薬鑑定試験により評価。筆記試験成績不良の場合,罰則レポートを提出。鑑定試験は合格するまで再鑑定試験を続ける。

受講生への指示

 実習開始までにかならずテキストに目を通し,実習内容の概略を知ったうえで実習に臨むこと。

他の科目との関連

 知識・理解面での基礎は,主として生薬学,薬用植物学,基礎化学,薬化学,分析化学,その他化学に関連した教科及び東洋医薬学関係の教科での履修内容と密接に関連する。実験操作の基礎的技術はこれまでに履修した全ての実習科目で得たものが基となる。

教科書・参考図書など
【教科書】 
北陸大学生薬学教室作成テキストおよび第十四改正日本薬局方解説書。
【参考図書】 
生薬・薬用植物学,薬化学,東洋医薬学で使用した教科書ならびに参考図書。
授業計画と授業概要
I .実習説明,およびガラス細工
 実習目的,実習上の要点ならびに注意事項,有機溶媒と水との関係(混和性,比重の大小),薄層クロマトグラフィー(TLC)などについて説明。その後,実習に不可欠な毛細管および沸石作りを指導する。
[キーワード]
・実験上の諸注意 ・有機溶媒 ・廃液 ・毛細管 ・沸石
II .生薬から成分を純粋に分離,精製する実習
 ヨウバイヒ[楊梅皮,ヤマモモ(Myrica rubra )の樹皮,ヤマモモ科,収れん薬,主成分ミリシトリン]を取り上げ,生薬成分の抽出,分離,精製,および化学構造を明らかにするための化学反応に関する基礎技術を学ぶ。
1.楊梅皮からミリシトリンの抽出,精製
 主成分のミリシトリンを抽出,濃縮した後溶媒処理により粗ミリシトリンを得る。
[キーワード]
・加熱還流抽出 ・濃縮 ・溶媒分離
2.ミリシトリンの精製および加水分解
 粗ミリシトリンを再結晶法により精製する。また,酸で加水分解し,アグリコン(非糖体)のミリセチンと糖部のラムノースを得る。ミリセチンは再結晶法により精製する。
[キーワード]
・ブフナーロート ・吸引ろ過 ・酸加水分解 ・再結晶法
3.ミリシトリン糖部の確認およびミリセチンの精製
 糖部はTLC法を用いてラムノースと比較同定する。ミリシトリンならびにミリセチンは共にマグネシウム—塩酸反応を行い,その呈色を比較し呈色に関与する構造部分を考察する。
[キーワード]
・TLC法 ・マグネシウム-塩酸反応
4.ミリセチンのアセチル化
 ミリセチンを無水酢酸ナトリウムと無水酢酸を用いてアセチル化する。生成した粗ミリセチンヘキサアセテートを再結晶法により精製する。
[キーワード]
・無水酢酸ナトリウム ・無水酢酸 ・アセチル化
5.ミリシトリン,ミリセチン,ミリセチンヘキサアセテートの純度検定
 上記3種のサンプルにつきTLC 法と融点測定法(微量融点測定装置を使用)を用いて純度検定を行なう。
[キーワード]
・TLC法 ・融点測定法 ・ミリシトリン ・ミリセチン ・ミリセチンヘキサアセテート
III .局方収載生薬の確認ならびに純度試験
 局方収載生薬のうち,特に重要なものまたはその確認試験方法が重要なもの20種を取り上げ,局方記載の方法に従って確認ならびに純度試験を行い,その含有成分の化学的性質について理解を深める。また,その過程において,各種器具類の名称並びに使い方,および各種試薬類の使用目的を正しく理解する。
1.ケイヒ
 代表的成分であるケイヒアルデヒドをTLC 法により確認。
[キーワード]
・ケイヒ ・ケイヒアルデヒド ・フェニルプロパノイド ・TLC法 ・UV照射 ・2,4-ジニトロフェニルヒドラジン試液
2.アロエ
 特徴的成分であるバルバロインをTLC 法により確認。また,主要成分であるアントラキノン系化合物を,ホウ砂添加時の蛍光発生および硝酸添加時の呈色により確認。
[キーワード]
・アロエ ・バルバロイン ・TLC法 ・UV365照射 ・アントラキノン ・ホウ砂 ・硝酸
3.アセンヤク
 主要成分であるアセンヤクタンニンを,ゼラチン試液を用いた沈殿反応により確認。また,同時に含まれるカテキン(アセンヤクタンニンの構成ユニット)を,バニリン-塩酸試液を用いた呈色反応により確認。
[キーワード]
・アセンヤク ・アセンヤクタンニン ・縮合型タンニン ・ゼラチン試液 ・カテキン ・バニリン-塩酸試液
4,5.キョウニン,トウニン
 特徴的成分であるアミグダリンをTLC法により確認。
[キーワード]
・キョウニン ・トウニン ・アミグダリン ・TLC法 ・ベンズアルデヒド ・青酸配糖体
6.オウゴン
 主要成分であるバイカリンをTLC法により,また,オウゴニンを希塩化第二鉄試液を用いる呈色反応により確認。
[キーワード]
・オウゴン ・バイカリン ・TLC法 ・オウゴニン ・希塩化第二鉄試液 ・フラボノイド
7.ニンジン
 特徴的成分であるギンセノシドRg1をTLC法により確認。また,希ヨウ素試液による呈色(切面を使用)でデンプンを確認(キキョウとの区別)。
[キーワード]
・ニンジン ・ギンセノシドRg1 ・TLC法 ・希硫酸 ・ヨウ素-デンプン反応 ・
サポニン
8.サイコ
 特徴的成分であるサイコサポニンaをTLC 法により確認。また,起泡試験によりサポニン成分を確認。
[キーワード]
・サイコ ・サイコサポニンa ・TLC法 ・エタノール硫酸混液 ・起泡試験
9.キキョウ
 起泡試験によりサポニン成分を確認。また,リーベルマン反応(無水酢酸と硫酸)によりサポニンおよびステロイド成分を確認。
[キーワード]
・キキョウ ・サポニン ・起泡試験 ・リーベルマン反応 ・ステロイド ・ヨウ素-デンプン反応
10.チョレイ
 リーベルマン反応(無水酢酸と硫酸)によるステロイド成分の確認。
[キーワード]
・チョレイ ・リーベルマン反応 ・トリテルペン ・ステロイド
11.センナ
 特徴的成分であるセンノシドAをTLC法により確認。また,主要成分であるアントラキノン系化合物を,アンモニア試液を用いた呈色反応により確認。[キーワード]
・センナ ・センノシドA ・ビアントロン ・TLC法 ・テトラヒドロフラン ・塩析 ・液性 ・溶媒分離 ・アントラキノン ・アンモニア試液
12.ビャクジュツ
 特徴的成分であるアトラクチロンをバニリン-塩酸試液を用いた呈色反応により確認。純度試験-ソウジュツ
 ソウジュツの混在の有無をその特徴的成分であるアトラクチロジンに着目し,TLC法により試験。
[キーワード]
・ビャクジュツ ・アトラクチロン ・バニリン-塩酸試液 ・ソウジュツ ・アトラクチロジン ・TLC法 ・p-ジメチルアミノベンズアルデヒド試液
13.ソウジュツ
 純度試験-ビャクジュツ
 ビャクジュツの混在の有無をその特徴的成分であるアトラクチロンに着目し,バニリン塩酸試液を用いた呈色反応により試験。
[キーワード]
・ビャクジュツ ・アトラクチロン ・バニリン-塩酸試液 ・ソウジュツ ・アトラクチロジン ・TLC 法 ・p-ジメチルアミノベンズアルデヒド試液
14.シャクヤク
 シャクヤクタンニンを塩化第二鉄試液を用いた呈色反応により確認。また,特徴的成分であるペオニフロリンをTLC法により確認
[キーワード]
・シャクヤク ・シャクヤクタンニン ・塩化第二鉄試液 ・ペオニフロリン ・TLC法 ・p-アニスアルデヒド-硫酸試液
15.ゲンノショウコ
 主要成分であるタンニンを塩化第二鉄試液を用いた呈色反応により確認。
[キーワード]
・ゲンノショウコ ・加水分解型タンニン ・塩化第二鉄試液
16.サンシシ
 特徴的成分であるゲニポシドをTLC法により確認。
[キーワード]
・サンシシ ・ゲニポシド ・TLC法 ・p-アニスアルデヒド-硫酸試液
17.キジツ
 代表的成分であるフラボノイド類をマグネシウム-塩酸反応(フラボン反応)により確認。
[キーワード]
・キジツ ・フラボノイド ・マグネシウム-塩酸反応
18.ロートコン
 トロパン系アルカロイド成分をFreemanの改良Vitali法により確認。また,特徴的成分であるアトロピンおよびスコポラミンをTLC法により確認。
[キーワード]
・ロートコン ・トロパン系アルカロイド ・Vitali法 ・アトロピン ・スコポラミン ・TLC法 ・ドラーゲンドルフ試液 ・液性 ・溶媒分離
19.オウバク
 特徴的成分であるベルベリンを,塩酸と過酸化水素試液を用いた呈色反応,およびTLC法により確認。また,粘液細胞の存在を,粉末に水を加えてかき混ぜるとゲル状を呈することから確認。
[キーワード]
・オウバク ・ベルベリン ・イソキノリン系アルカロイド ・塩酸 ・過酸化水素試液 ・TLC法 ・UV365 照射 ・ゲル状 ・粘液細胞
20.ゴシュユ
 代表的成分であるアルカロイド成分をドラーゲンドルフ試液により確認。また,インドール系アルカロイド成分をp-ジメチルアミノベンズアルデヒド試液による呈色反応で確認。
[キーワード]
・ゴシュユ ・アルカロイド ・ドラーゲンドルフ試液 ・インドール系アルカロイド ・p-ジメチルアミノベンズアルデヒド試液
IV .TLCによる学内の植物の成分調査
 学内に生育する植物を各自採集し,TLC法により含有される成分の種類を調べる。
[キーワード]
・自生植物 ・採集 ・抽出濃縮 ・溶媒分離 ・TLC法 ・成分調査
V .薬局方収載生薬の鑑定のための生薬スケッチと生薬鑑定試験
 各生薬の観察とスケッチを行ない,生薬の鑑定力を養う。
[キーワード]
・スケッチ ・鑑定試験 ・全形生薬 ・切断生薬 ・粉末生薬
IV .体験実習(楽しみながら学ぶ)
1.漢方湯液散料調剤,薬膳,健康茶の試飲と試食
 繁用される漢方湯液及び散料数種を実際に調剤し,健康茶と共に試飲し味を経験する。また,薬膳料理を作って試食する。
[キーワード]
・漢方湯液 ・散料 ・調剤 ・薬膳 ・健康茶 ・試飲 ・試食 ・味
2.紙分子モデルの作成とスパイス調合
 少人数のグループにわかれ,モルヒネやレセルピン等重要な天然物由来医薬品の分子モデルを共同で作り立体構造を認識する。また生薬を用いた手作りカレー粉を作り,スパイスに馴染む。
[キーワード]
・分子モデル ・アルカロイド ・紙細工 ・スパイス ・手作りカレー粉
3.生薬標本室の見学
 前述の実習では対象が局方収載生薬に限られるが,これら以外の生薬(伝統薬物)について,少人数のグループにわかれ,生薬標本室で観察する。教室員が解説を加え知識と理解を深める。
[キーワード]
・生薬標本 ・伝統薬物 ・漢薬 ・ウイグル生薬 ・チベット生薬 ・アーユルヴェーダ生薬 ・ユナニー生薬 ・ヨーロッパ生薬
4.薬用植物園見学
 少人数のグループにわかれ,教室員が先導,解説しながら薬用植物園見学を行なう。生薬の基原植物の姿に直に触れ,観察し,親しむ。
[キーワード]
・薬用植物園 ・基原植物 ・薬用植物