北陸大学未来創造学部
2006年度 授業計画
SYLLABUS

科目名 配当学年 開講期 必修・選択 単位数
社会創造論II(政策決定) 2年 後期 必修 2
担当教員名 所属 研究室 内線電話 E-mail
北村 喜義 未来創造学部 518 747 k-kitamura@hokuriku-u.ac.jp

授業の目的

 社会そして個人において次々と提起される諸問題の適正な解決が諸科学の総合政策によってなされるならば,個々の専門分野を総合する政策プランナーの存在が重要となります。このような政策プランナーの養成が「政策決定」授業の第1目的です。よって「政策決定」は諸科学を横断する総合的学際的な理論体系を修め得た一人の専門家による講義を理想とします。授業の第2目的はこれら諸問題の内容の解析です。歴史が過去の政治学的考察,すなわち,過去の幾多の事象の中から特定な価値意識によって問題を選考し考察することであるとすれば,政治学さらには政策科学による諸問題の内容の解析は現代の歴史的分析,すなわち,現代よりもはるかに長い過去の事象の総動員による現代の照射であると言えましょう。そして授業の第3の目的はその社会紛争の問題を解決する「政策決定の方針と手段の体系」の内容の提示です。その際に,諸問題の複雑性と相互関連性からして学際的アプローチを必要とします。
 このように,「政策決定」は「政策科学」の中のより高度な専門的分野と見做してよいでしょう。受講生は「私ならこのような政策決定を行う」を念頭に置き,政策プラン能力を高めてください。

授業の到達目標

 授業目的の統合目標は「政策決定」の要諦の習得によって社会組織に於けるより専門的な政策のプランナーとしての知的基盤を構築することにあります。授業の達成目標は身近な政策課題,例えば「最近,電気料金はなぜ値下げされたのか?」に関して各受講生が独創的な思考内容を論述できるようになることです。

成績評価の基準・方法

評価項目 割合
出席状況
確認テスト 80%
定期試験 20%
受講態度
【評価項目の具体的な内容】
  1. 毎回授業時間中に行う確認テスト(80点換算)【論述50%】
  2. 定期試験(20点換算)【論述50%】
  3. 授業回数の3分の1を超えて欠席した場合,単位充足未得点となる場合があります。
  4. 出席していても確認テストの内容が良くない場合は,欠席扱いとなります。
  5. 出席状況及び受講態度は結果として重視されます。
  6. 本講義は,講義内容,20回の確認テストの評価,定期試験の評価の全てを情報公開します。

受講生へのアドバイス
  1. 毎回の確認テストの解答作成は相当な時間と労苦を伴いますが,講義内容は確実に自己の頭脳に刻まれていきます。確認テストの作成中に講師と諸君との間に積極的な質疑応答が展開されます。
  2. 毎回講義録(8,000字)を配付します。これは講義の直前に講師自身が作成したものです。この講義録は私の講義の口述を文章化したものです。文章の口述化ではありません。
  3. 確認テストの良し悪しが出欠を自動的に決定いたします。毎回,簡単な英文解釈問題を付加しますから英文読解力を付けてください。
他の科目との関連

 「政策決定」は諸科学の最大成果の総合化です。よって,本学において開設されている社会・人文諸科学さらには自然科学系の講座科目とも深い相互関連性を有しています。

教科書・参考図書
【教科書】
 社会創造論II(政策決定)は発展過程にある科学であり,定本的な教科書はありません。従って毎回講義録(8,000字)を配付します。
【参考図書】
 丸尾直美『総合政策論』(有斐閣;320頁,3,400円)
 大谷・太田・真山『総合政策科学入門』(270頁,3,000円)
授業計画

第1講義
  [テ ー マ] 社会創造論II:ガイダンス
  [ね ら い] 社会創造論II(政策決定)学習の内容と目的,さらに具体的方法を理解してもらいます。
  [概   要] まず,政策課題設定→政策作成→政策決定→政策実施→政策評価→Feedbackという政策循環論の中での「政策決定」の概念と重要な位置付けを説明します。
第2講義
  [テ ー マ] 政策理論の策定と実現の時間的乖離
  [ね ら い] 4大政策理論策定50年周期説(Smith『国富論』1776年:Ricardo『経済学及び課税の理論』1821年:Marx『資本論』1867年:Keynes『雇用・利子・貨幣の一般理論』1936年)から政策の絶対的妥当性に疑問を呈しましょう。
  [概   要] 4大政策理論の〔問題規定〕,〔解決政策〕,〔政策課題〕の内容と意義を比較対照的に説明します。そして旧利害関係の消失と新利害関係の創造こそが4大政策理論の共通課題であったと理解できます。
第3講義
  [テ ー マ] 重商主義Mercantilism策定と航海条例Navigation Acts政策
  [ね ら い] 300年間にわたる「重商主義」とそれを支えてきた「航海条例」を「自由貿易」との対抗による敗北政策として理解を進めます。
  [概   要] 「重商主義」の特質は国内市場保護となりますが,同時に自国産業のための原料調達市場と製品販売市場としての植民地獲得競争に連結し,そのための中継貿易を自国の船舶で独占しようとする航海条例が不可欠となります。
第4講義
  [テ ー マ] ケインズ理論I
  [ね ら い] 「賃金低下による不況の深刻化」と「生産量増大と失業解消のための政策」を解説し,政策連鎖の根本理論を理解してもらいます。
  [概   要] ケインズによる「賃金低下→人々の購買力の低下→景気の悪化」の連鎖論さらに新古典派による「物価の低落→貨幣を初め金融資産の実質価値の引き上げ→人々は実質的に金持ちになる→消費支出の増大→需要不足の解消→供給の増加」の連鎖論とを対比して考察します。
第5講義
  [テ ー マ] ケインズ理論II
  [ね ら い] ケインズ理論の中の「完全雇用と有効需要の連鎖」を解説します。この政策理論は各国の金融当局によって広く採用されています。
  [概   要] 「民間投資が少なく,完全雇用をもたらさない場合,政府は公共投資を行なう」, 「逆に民間投資が過剰な場合は有効需要の低減が必要となり,需要を社会から吸い上げることが賢明でなる」。この伸縮的財政政策は現代の資本主義国家の財政政策の根幹をなすものです。
第6講義
  [テ ー マ] ケインズ理論III
  [ね ら い] 「貯蓄による所得の決定論」を解説します。金融政策は人々の日常生活に直接影響を「金融不況」として及ぼすことを理解してもらいます。
  [概   要] 「所得と貯蓄に対する所得決定理論」の根幹は「利子率の高低とは無関係に投資と貯蓄は等しくなるから金融市場に対する介入は金融市場の調和を害さない」にあります。これに対して古典派は「投資と貯蓄に対する利子率決定理論」によって真っ向から対抗します。
第7講義
  [テ ー マ] ケインズ理論IV
  [ね ら い] 「貿易理論体系と各連鎖論」を解説します。ケインズは「一国の繁栄は他国の不況の上に構築される。これが戦争の原因となる」としております。これが有名なケインズの戦争原因論です。その妥当性を検証しましょう。
  [概   要] 「輸出は有効需要への追加となり,輸入は有効需要の減少となる」,「貿易黒字は国内生産量を高め,不況を除去し,雇用量を増加させる」,「貿易赤字は国内生産量を低め,雇用量を減少させ,失業を増大させる」となります。
第8講義
  [テ ー マ] 行動経済政策学:プロスペクトProspect理論
  [ね ら い] 伝統的経済学は「合理的経済人」を前提としているが,行動経済政策学は「Prospect(見込み)的経済人」であると規定しています。2002年ノーベル経済学賞授賞のプロスペクト理論の是非を検証してみましょう。
  [概   要] プロスペクト理論の結論である「人間は利益を受ける場合はリスクを避ける傾向がある」「人間は喪失を被る場合にはリスクをとる傾向がある」が,政策の選択に際して有益となります。
第9講義
  [テ ー マ] 政策決定事例問題 タバコ価格政策
  [ね ら い] タバコ価格の変動と喫煙者数・直接喫煙による死亡者数・タバコによる医療費・タバコ税収の数値を提示し,最良の政策を決定してもらいます。
  [概   要] タバコ1箱現在250円の場合の喫煙者数は2,800万人,死亡者数は10万人,医療費は1兆3,000億円,タバコ税収は2兆3,000億円です。これがタバコ1,000円となるとそれぞれ1,000万人,3万人,5,000億円,3兆3,000億円に変動します。
第10講義
  [テ ー マ] 「失われた10年」政策決定
  [ね ら い] 2001年O’Neil 米国国務長官「この10年間,日本政府は自己の経済政策を遂行してこなかった。」【失われた10年】の意味を検討してみましょう。
  [概   要] 公債を普通国債・融通債・繰り延べ債・建設国債に区分し,その内容と問題点を検討した場合,特に,財政法第4条による「建設国債」の横行が見られます。
第11講義
  [テ ー マ] 連立政権の公共政策決定
  [ね ら い] 1993年成立以降の連立政権の経済政策の内容を吟味します。そして過去10年間の景気対策財源バラマキ段階を検証します。
  [概   要] 2000年総選挙における連立自公保3与党の共通公約における景気対策・財政政策の決定過程を辿ることによって2002年度累積財政赤字額666兆円の問題が明白となります。
第12講義
  [テ ー マ] 法政策 対 経済政策 それに加わる社会政策I
  [ね ら い] ここでは2000年発効の【定期借地借家権】に見る法の政策を借地借家人に対する保護条項の法源から明白にし,社会的経済効率を重視する経済の政策の内容と意義を検証します。
  [概   要] 新「借地借家法」の内容,特に,契約更新拒絶の「正当事由」の認定基準の内容の変化の意義さらに【定期借地借家権】制度の目的・種類・そして影響を,旧借地権・定期借地権・事業用借地権と比較対照します。
第13講義
  [テ ー マ] 法政策 対 経済政策 それに加わる社会政策II
  [ね ら い] 第12講義を引き継いで【定期借地借家権】の内容を吟味します。そして【定期借地借家権】に対する賛成と反対の論理そして政治的判断としての妥協政策を整理することによって「法と経済と政治」の課題に接近します。
  [概   要] 反対論理は「大都市における膨大な低所得層借家人の存在」とする見解です。賛成論理は「《正当事由》の解釈による借家人に対する過保護」,「現行借地借家法は契約の自由を制限し過ぎている」とする見解です。
第14講義
  [テ ー マ] コーポレート・ガヴァナンスと政策決定I
  [ね ら い] 「コーポレート・ガヴァナンス」が定義内容の意義を明白にすることによって企業が抱える諸問題とその解決方法を抽出します。
  [概   要] 山一証券の場合は法令違反の「隠し赤字」である「簿外債務」2,600億円の存在という経営者の背信行為を解明します。そして「株主代表訴訟」の現状と有効性を考えます。
第15講義
  [テ ー マ] コーポレート・ガヴァナンスと政策決定II
  [ね ら い] 「コーポレート・ガヴァナンス」の特徴と意義を,ドイツの「監査役制度」,米国の「社外取締役制度」,「機関投資家」に焦点を合わせて検証します。
  [概   要] 米国のリレーションシップ・インベストメントを検討し,Enron(2001年)とWorld Com(2002年)の粉飾決済による破綻事件の内容と原因を明らかにします。
さらに「企業改造法 Servence Oxly法」の内容を紹介します。
第16講義
  [テ ー マ] 原爆投下とポツダム宣言受諾の政策決定I(Samurai×Cow Boy)
  [ね ら い] 2004年6月にB29爆撃機機長Paul Tibetsがサイパン攻防60周年で講演した内容は「私は軍務を愛した」,「被爆の惨状に触れることは名誉を汚す」でした。ここでわずか60年前の「文明の衝突」に触れて見ましょう。
  [概   要] 「1945年」の決定的13事項を説明します。そして「米国の絶対的軍事優位確立の原因」を検証し,次にマンハッタン計画の内容と意義を考えてみます。実験段階の原爆に対する米国政府首脳の評価を確認しておきます。
第17講義
  [テ ー マ] 原爆投下とポツダム宣言受諾の政策決定II(原爆開発とソ連参戦)
  [ね ら い] 1945年8月15日に日本はPotsdam宣言を受諾しました。その契機はソ連の対日参戦かそれとも原爆投下のどちらであったのか評価は別れています。いま一度,米国と日本の政策決定過程を検証してみます。
  [概   要] 1945年7月にTruman大統領はソ連の対日参戦を強調しております。妻Bess宛の書簡には重大な国家機密も含まれています。その中で世界を震憾させた意味深い事項を取り上げます。
第18講義
  [テ ー マ] 原爆投下とポツダム宣言受諾の政策決定III(原爆投下の真の目的)
  [ね ら い] 1945年5月8日に日本の盟友ドイツは米国とソ連の猛反撃の前に降伏しました。次は日本帝国の壊滅ですね。「原爆投下それのみを目的として日本に降伏を遅らせる」政策の内容を明らかにしましょう。
  [概   要] 1945年2月11日のヤルタ会談の密約で「ドイツ降伏の2〜3カ月後にソ連は対日参戦」が取り決められていました。それに基づいて「太平洋戦争の集結」,「戦後構造での米国優位」,「日本の終戦工作」が展開します。
第19講義
  [テ ー マ] 原爆投下とポツダム宣言受諾の政策決定IV(日本の終戦工作)
  [ね ら い] 「日・独・米の原爆開発研究競争」と「原爆神話の50年」そして「日本の終戦工作」を検証します。
  [概   要] 米国マンハッタン計画(20億ドル+125,000人の研究者投入)成功が1945年7月。ドイツの降伏は5月。原爆投下は日本しか残っていない。日本のどこに投下するか。悪魔といえども手が震えるような政策決定の瞬間です。
第20講義
  [テ ー マ] 経済政策の理論と決定分析
  [ね ら い] 政策の最大たるものは「経済政策」でしょう。この基本原則を理解しなければ社会創造論(政策分析)の理解は前に進みません。
  [概   要] 「消費が少ないから景気が悪い」と「景気が悪いから消費が少ない」の対立命題のどちらをあなたは支持しますか?経済学ではこの対立命題が同時に成立します。経済現象は全てが他の全てに依存するのです。
  [教科書の範囲] 『総合政策論』第2章